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2008年 03月 02日
Le rossignol
ちょっとしたきっかけがあって、書棚の奥のほうに仕舞ったままになっていた或る本を取り出す。末尾ページ余白に購入日を書き入れていた:1993年11月5日。

本のタイトルは"Anthologie de la poesie japonaise classique" (traduction: G. Renondeau, Gallimard - Collection POESIE,1978) つまりフランス語訳『日本の古典詩歌選集』。万葉集や古今集をメインに、江戸時代の俳句までを作者ごとに数首選んで掲げられているものだ。

試しに一首、引用してみよう:

  N'etait le chant
 Que lance dans la vallee
  Le rossignol,
 Qui donc saurait
 Que le printemps est arrive?

※アクサン記号は表記出来ないため省いている(たとえば1行目の「etait」の「e」にはアクサン・テギュ(´)が付く)。

このフランス語からそのまま日本語に訳してみよう。

1行目のN'etait〜は仮定法過去で「〜がもし無かったならば」の意。三行目の rossignol を仏和辞書で引くと「ナイチンゲール、夜鳴き鶯(うぐいす)」と出る。le chant que lance dans la vallee le rossignol は「鶯が谷間にて発する鳴き声」。つまり上の句は、この「鳴き声が無かったならば、」となる。4行目の saurait は savoir (知る)の条件法で、1行目の N'etait を受ける。doncは強めで「ならば」。Qui donc saurait で「では誰が知るだろうか」。そして5行目はそのまま「春が来たと云うことを」。
これをつなげてみると:

 鶯が谷間にて鳴くその鳴き声がもし無かったとしたら、
 ではいったい誰が春が訪れたのを知ることであろうか。

それほどまでにウグイスの初声が待ち遠しいという、春を待ちわぶ気持ちである。

さてこれで、原歌が浮かぶだろうか。『古今和歌集』を読んだことがあればきっと思い当たるだろう。

                    大江千里
 鶯の谷よりいづるこゑなくば春くることをたれか知らまし
 (古今和歌集、巻第一、春歌上)


…さて今年は、いつ聞くことができるだろう。

by junitchy | 2008-03-02 16:47 | 和歌逍遥 | Comments(2)
Commented by pleyel at 2008-03-11 23:30 x
こんにちは。新ブログのリンクをありがとうございました。
ちょっと引っ越しましたのでこちらにいらしてください。
ウグイスが歌っていますよ。
http://blog.goo.ne.jp/kyoko-nishiyama/
Commented by junitchy at 2008-03-12 21:43
どうもです。さっそくリンク先のアドレスを直しておきました。


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