2005年 10月 09日
大空位時代
「美に先立たれた一時代」(マラルメ)

——これは『ディヴァガシオン』の冒頭に収められている「未来の現象」と題された散文詩の最後に出てくる一節。ボードレールを思わせる頽廃的なイメージの、未来の見世物小屋、そこでは、とっくの昔に亡くなってしまった(「美」という)女を見世物にしているのだ。ただし、マラルメにとってはこれは「未来の」光景などではない。彼はまさしく彼自身の時代に対してこのような時代認識を抱いていた。曰く、詩の「大空位」時代。巨匠と言われるような大詩人の不在。かつての権威の失墜。失われた美。そして、このような時代認識はまさに「近代(モデルン)」といったものを定義する。こうした状況のなかで「美」を追い求めること。それを捉え、詩句のうちに定着させようとすること。錬金術に例えられるようなその詩作行為そのものが、まさにマラルメの<詩>における、一貫したテーマだった。

by junitchy | 2005-10-09 15:02 | 冗語縷々


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