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2006年 10月 14日
オルフェ
先日、ある書店にて、普段ならば全く気に留めずに通り過ぎているはずなのだが、名作映画の格安DVDが数多く陳列されている中で、ふと『オルフェ』というタイトルが目に留まった。これはほとんど偶然というか或る種の巡り合わせでしかないのだろうが、次の瞬間にはその薄っぺらいパッケージを手に取り、そしてそのまま購入してしまった。定価500円也。

このジャン・コクトーの名作を、恐らく過去に一度だけ見たことがあったはずだ。たしか高校生か大学に入る前の頃、テレビで年末年始の深夜の時間帯に映画ばかり続けて放送していた中でやっていたのだと思う。もしかしたらビデオに録画していたかも知れない。ただし、ストーリーとかは全く覚えておらず、映像についても全く記憶がなかった。それを先ほどPowerBook G4にて鑑賞した。

Macで映画を見るのはタルコフスキーの『サクリファイス』のDVDを買った2004年11月の時以来。何度か他所で書いたことがあるが、わたしは映画はほとんど観ないほうで、映画館に封切り映画を観に行くこともなく、レンタルビデオ(DVD)を借りてくることもないし、そもそもレンタル屋の会員でもない。ごくごく稀に、観てみたくなるものがあるくらいである。

今回は実に久し振りの映画鑑賞なのであるが、この『オルフェ』の美しい映像に、やはり見入ってしまった。とても手の込んだカメラワークに思わずうなってしまう。
生と死の境を往き来するという古代的・神話的な(つまりオルフェウスの)モチーフが、車、バイク、ラジオ、群衆、警官、裁判所など「近代的」装置を多用しつつ巧みに語られていくのが大変興味を惹く。"La mort"(死)と呼ばれる冥界の女王は、冥界の命令に勝手に反したかどで法廷で裁かれ、執行猶予付き有罪との判決を受ける。さらに、死んだオルフェを冥界から連れ戻す(生き返らす)という「越権行為」をしたために最後に冥界の「作業員」に連行されるところで映画は終わる。鏡に映じた「あちら側」の世界というものに対するロマンティックないし感傷的な思いというものとは裏腹な、なんとも現世的というか近代的な冥界ではないだろうか。
死という掟、つまり不可侵かつ不可逆の掟を「破る」という、不可能性そのものであるところの越権行為、それはおそらく、古来、詩人のもとでしか可能ではなかったのだろう。死と詩人、つまり女王とオルフェ。二人はそもそもの最初からお互いを惹き合っているのである。たとえ、永遠に引き裂かれようとも。

いずれにしても、とても面白かった。たまに映画を観てみるのもいいものだ。格安で手軽に購入できるということで映画作品を観る機会が増えるというのはありがたいものである。特にわたしのような映画不精にとっては。
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by junitchy | 2006-10-14 16:50 | 冗語縷々 | Comments(0)